書籍紹介『AI・データ倫理の教科書』福岡真之介 (弘文堂)
G検定で出題傾向が多くなってきたAI倫理を学べる本を読ませて頂きましたので、簡単ですがご紹介させていただきます。
それではよろしくお願いします。
本書の内容
AI倫理について判断の枠組みと具体的事例を紹介することで、AI倫理に関してどのような点に気を付け、どのように判断すればよいのかについて、手がかりを示すことができる本となっています。
内容構成
- 倫理の判断枠組みの説明
- 各国のAI倫理原則の紹介
- AI倫理が問題となった事例の紹介
- AI倫理に対する企業の取組み
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倫理の判断枠組みの説明
倫理と法律の違い
法律に違反した場合には刑罰や損害賠償があり、しかも、それを国家が強制できる。
これに対して、倫理については、違反しても国家が刑罰や損害賠償を強制することはできない。
ELSI(エルシー)
倫理的・法的・社会的課題の頭文字をとったもので、新しい科学技術を社会に普及させるには、倫理(E)、法(L)、社会(S)の課題に対処する必要があるという考え方。
人命の価値はすべて同じ
ドイツの「道路交通法及び強制保険法改正のための法律(自動運転法)」においては、自動運転車は、技術的要件の1つとして、いずれかの人命への危機が避けられない場合、個人の特性によって重みづけをすることが禁止されている。(人命の価値はすべて同じ)
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各国のAI倫理原則の紹介
各国のAI倫理原則
- 各国のAI倫理原則の共通点
- 人間の尊重
- 多様性・包摂性の確保
- サスティナビリティ
- 人間の判断の関与・制御可能性
- 安全性・セキュリティ
- プライバシーの尊重
- 公平性
- アカウンタビリティ
- 透明性
現在は、各国のAI倫理原則の作成は一段落し、AIをどのように社会に実装するかの方法や、AIをどのようにガバナンスするかのモデルについての議論に移っている。
- 欧州:人の権利や責任に重点が置かれている。
- 米国:AIの社会便益の最大化を進めることや自立型兵器などの長期的なリスクにも積極的に言及。
- 日本:AIの普及促進と同時に人々の不安解消に重点がおかれているとの指摘あり。
AI倫理-人工知能は「責任」をとれるのか (中公新書ラクレ (667)) 新品価格 |
AI倫理が問題となった事例の紹介
Tay事件
(事件詳細は割愛)
殺人者が包丁で人に怪我をさせても包丁に「反論理的行為」を考えませんが、包丁などの道具と違い、AIの場合には、「知性」を有するように見えることから、人には、あたかもAIが行為した(「反論理的行為」をした)ように見えてしまう。
マイクロソフトはどのように対策すればよかったのか(案)
- 入力段階の排除:ユーザの入力段階で悪意ある表現をフィルタリングにより排除する。
- 出力段階の排除:Tayの出力段階で反倫理的発言をフィルタリングにより排除する。
- 学習用データの除去:Tayの発言元となる学習用データから反倫理的発言につながりかねないデータを除去する。
- ユーザ情報の不利用:Tayは、開発者が用意したデータのみを利用し、ユーザの入力により学習しないようにする。(効果は高いが、学習によって成長するというAIとしての能力に大きな制約が課されてしまう)
- 都度削除:Tayが反倫理的発言をした場合には、その都度、その発言を削除する。
- ユーザへの要請
- 社会への事前告知
- 利用者責任の明確化
イ・ルダ事件
(事件詳細は割愛)
Tay事件の1、2、4の対策が不十分であった。
開発したスキャッター・ラボ社は、「レズやゲイが何であるかも自ら学ばなければならないと考え、このテーマについて対話できるようキーワードを排除していなかった。
また、スキャッター・ラボ社は、開発において利用した対話データは、カカオトーク(LINEのようなサービス)を使った自社の恋愛分析アプリと、利用者の対話データを利用してが、匿名化が不十分であったため、利用した人の個人名や住所、銀行口座まで会話に出たため、個人情報の問題も起こしていた。
倫理、説明、データ利用、23の注目事例から学ぶ正しいAI導入 新品価格 |
などなど・・・AIと倫理、そして問題事例など、興味深い内容を300ページ以上収録。
元々は借りて読んでいたのですが、あまりに内容が充実しすぎてたため、最終的には購入しました。
AI業務に関わる人はもちろんのこと、G検定対策にも利用できる一冊かと思います。
とてもおすすめですので、興味持たれた方はぜひ読んでみてくださいね。