書籍紹介:小説を読みながら”作詞”と”人の闇”を学べる本『作詞少女』仰木日向・まつだひかり
◆何について書いた本か。
小説を読み進めながら、作詞の方法を学べる本(ライトノベル)。
著者:仰木日向さんは以前に「作曲少女」という本を出版しましたが、その作詞版。
物語は、高校2年生の江戸川悠が、友人の尚子がギター&ボーカルを担当するバンド曲の作詞をお願いされることからはじまります。
日頃からこっそり詩集を書き溜めている悠は、プロの歌詞を参考にしながら、1時間程度で作詞をして尚子に渡してみたが・・・。
本書のポイントは下記3つ。
- 作詞に必要な8つの技術
- 「都合の良いもの」が売れる
- 良い作詞とは
(ここでは割愛しますが、小説本としても楽しめる一冊でしたよ!)
(1)作詞に必要な8つの技術
作詞入門として必要な技術は上記8つ。
- 作詞とは・・・音楽語の日本語吹き替え(作曲家の言いたいこと・伝えたいことを言葉にする)
- 歌詞書式・・・Aメロ、Bメロ、サビのように人にわかりやすいフォーマットに組み立てる。
- 資料読み・・・「誰が、いつ、どのタイミングで、誰に向けて、何をテーマに」を収集する。
- 字数・・・歌詞へのあてこみ(1音1文字だけでない。「こぼし」、「英語調子」も)
- 語彙・・・曲(音楽語)を聴き、キーワードのニュアンスをすべて含むキャッチコピーを考える。
- 母音・・・「おいうえおん」6文字のみで歌ってみて、発音として心地いい母音をみつける。
- 韻・・・同じような発音や母音の言葉を繰り返し使いグルーヴ感を出す。
- ナンセンス・・・(日本語など言葉として)意味がなく、発音すると気持ち良い。例:PPAP(ピコ太郎)
作詞について学んだことがない私にとっては、6つ目の技術「母音」が特に「なるほど!」とさせられました。
声に出してみるとわかりますが、「あいうえおん」の6文字の中でも、「あ」は口を上下左右にしっかりとあげるため、力強い声をだせ、ビブラートもやりやすいが、「う」や「ん」は口をつむぎ、鼻声っぽくなるため、ロングトーンできない。
曲の盛り上がりに、母音が「あ」の音を力強く響かせたり、数音たたみかけることで、曲の迫力も増すというもの。
本書には書かれてない曲だが、昔のヒット曲なら、「あー夏休み」(TUBE)。
あ〜なーつやすみ〜。
母音「あ」をサビ冒頭に2音つなげることで、より盛り上がれる名曲に仕上がっているんだなーとか、個人的に納得。
ゆずの「嗚呼、青春の日々」や、クリスタルキングの「大都会」なども同じですね。
なんか、いろいろ応用できそうなテクニック!
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(2)「都合の良いもの」が売れる
「良いもの」が売れるのではなく、「都合の良いもの」が売れる。
・・・本書後半から、作詞で大事な核心部分に入っていきます。
人間は卑怯で臆病なもの。
しかし、そんな自分を認めることができないのも人間。
意識していることも、無意識なことも含めて。
だから、「君の頑張りをみてるよ」とか、「大丈夫」や、「明日から頑張っていこう」などという許し文句を、甘く優しい歌声の美男美女が歌えば、(実際は、たいした努力や頑張ってもいないのにも関わらず・・・)癒されたり、元気になったりしてしまう。
偽ったうわっつらだけのヒット作をよい歌詞とだまされないこと。
人間は、SNSに誹謗中傷を書き込んだり、売れてる人をバッシングしたり、幸せそうな人を妬んだり、弱いものいじめたり、騙したり、不倫して大事な人をうらぎったり、はたまた、意図的に戦争を起こそうと画策したりする生き物。
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(3)良い作詞とは
では、どういう歌詞が良い歌詞なのか。
嘘をつかずに書くこと。
自分の心の闇をしっかりと暴きだし、自分自身でしっかりと受けいれる。
意識している部分だけでなく、無意識な部分までも。それこそが個性。
自分の個性を本当に理解できた上で、上記8つの技術を活用できるのが作家。
もちろん、心の闇が前面に出た歌詞だと、見栄と欲望のかたまりな歌詞になってしまう。
その場合は、ナンセンス(日本語として意味をなさない)を活かすのも1つの方法。
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◆おわりに
ゆるふわな小説を読みながら作詞の基礎を学べると思い、何も知らずに読み進めていた私。
作詞をなめてましたね。。。
後半に訪れる衝撃的な展開。
私自身も触れたくなかった「人の闇」の話。
なかなか出会えない衝撃作。いろいろと考えさせられました・・・。
作詞の入門編としてはもちろんですが、小説本としても読み応えあります。
ぜひともおすすめいたい一冊。
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